貧困の子に、「体験」を

貧困

子どもたちのボランィア精神を育む

「シンクグローバリー、アクトローカリー(Think Globally, Act Locally)」。これはボランティア精神を表わす有名な言葉ですが、「地球規模で考え、足元から行動せよ」という意味です。

でも、いきなり足元といっても、かえってよく分からない。視野を広くしてこそ、見えてくるものがある。だから、子どもたちに、海外を体験させたいんです。

ツワモノも出てきています。異民族に関心を抱き、大学でタイの山岳民族を研究している子は、「先生、私はなんでも食べられると思うんだけど、やっぱり牛の血のジュースだけは飲めなかった」と。

 

小さい頃からボランティアを経験させている子が大学生になると、パントリーの手伝いから始め、私たちの学習支援を手伝わせたりしています。だんだんボランティアのレベルが高くなり、できることも多くなる。そのうち、自力で自治体の事業などにも参加するようになればと期待している子もいます。

 

ところで、「ボランティアをやっている自分が好き」という人が結構いる、と人から聞いたときは、違和感を覚えました。「やってあげるボランティア」はダメだと思っています。基本的には「やらせてもらっている」。だって、支援相手がいないと支援できない。ボランティア活動を通して、「お互いいてくれて良かった」という関係を築くことほど、楽しい人生はありません。

 

女性問題は「貧困問題」につながっていた

足立区女性団体連合会に入会したのは、あるイベントに参加したことがきっかけです。当初、この団体が掲げる「男女共同参画」のことをあまり理解していませんでした。私自身は、雇用機会均等法の後に社会に出て、仕事内容も男女の差が関係ない職場だったのでなおさらです。しかし、活動にかかわり学ぶうち、女性の立場の弱さを実感しました。

 

例えば、女性の平均年収は男性の7割ほどで、非正規雇用者は男性の2倍です。昔であれば、女性は家のことに専念すべきと外に出られず、男女の不平等は明らかでした。でも今は、多くの女性が家庭の外で働いています。かえってギャップが見えづらくなってしまった。

 

その矛盾が一番過酷に現れているのは、シングルマザーです。再婚率も低く、数でいえば父子家庭より母子家庭が断然多い。なにより年収が低くて子どもを十分に養えない。これまで子どもの貧困問題に取り組んできましたが、ここで初めて「母子」という視点を得て「女性問題」が、私の中でつながりました。

 

足立区女性団体連合会という団体は、さまざま審議会や協議会に出たりと、区政に向けて発言する機会がある。やり方しだいでは、いろんなことができるわけです。私の次を担う50代の後輩たちがより充実した活動が展開できるよう、今から構造改革する事が自分の役割だと考えています。

 

選挙に立候補することで、子どもたちに主権者教育

2018年、足立区区議会選挙に立候補しました。しかし、もともと自分が出るつもりはありませんでしたが、上智大学教授の三浦まりさん主催のワークショップに参加したことが元で、そうなりました。

 

講演で三浦さんは、アメリカの市民政治について熱く語られました。あちらの選挙では、地域の課題や解決すべき問題に取り組む議員を、市民自らが選び、担ぎ出すと話されます。それに比べて、日本は女性議員を応援する意識が社会的に希薄であることも。すっかり共感した私は、夫や友人に「自分たちで候補者を探して擁立しよう」と提案。すると、「お前が出ろよ」「あなたがやりなさい」と。それでいろいろ考えてしまう。「応援するにしても、自分が出て経験してみないと分からない」「子どもたちにとっても、身近な者が立候補すれば、主権者教育にもなる」「英語、社会貢献を教えて、あとは政治じゃないか」と思い立ち、結局チャレンジすることに。「国は自分たちがつくる」という主権者教育は、日本であまり行われていなかったことですし。

 

その年の1月、重症の肺炎にかかって10日間入院。2カ月ほど仕事を休み、選挙活動もできませんでした。結果的には、1470票で落選。後で政治に詳しい人に聞けば、準備に2年はかけて支持者をつくり地盤を固めなければならないということでした。それを早く教えてくれよと。しかし、「子どもたちが政治に関心を持つ」という目標は達成。支援者を擁立するノウハウも得ました。今後、私自身が立候補するつもりはなく、可能性のある人を応援したいです。

 

足立区を誇りに思う、地域活動する次世代を

足立区は格差が大きな地域です。エレベーターがある裕福な家があれば、道一つ隔てると古いアパートがある。昔、ある生徒が、「足立区出身であることが恥ずかしくて口にできない」と打ち明けたときはショックでした。今、私の生徒にそんな子はいませんが、生まれ育ったこの街を負い目に思う子は周囲にたくさんいると聞きます。

 

大切なのは、自分が何をしたか。足立区は課題がたくさんある地域ですが、その分ボランティアの経験もたくさんできる。自分たちの手で、誇れる故郷をつくり出せばいい。そんな次世代を育てたいという想いが強くあります。

(聞き手/上田隆)

 

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